熱中症関連

今年の猛暑見解から考える、2021年の熱中症の発生

  • 今年の夏は猛暑という見解で、2018年と類似している。
  • 2018年は熱中症の発生が過去13年間で最多
  • 過去13年間の1日の搬送件数の最高人数は、2018年7月23日の東京で453人

先日、ウェザーニューズが猛暑見解2021を発表しました。(https://jp.weathernews.com/news/35949/
この見解では、梅雨明けが7月上旬となるところが多いことや、暑さのピークが7月下旬と8月下旬であることなどが予想されています。また、ラニーニャ現象*後であることから、2018年の状況と類似した傾向がみられます。

2018年は、2008年から2020年までの13年間で、熱中症の搬送件数の総数が最も多かった年であり、その件数は6月~9月の3ヶ月間で92,710件でした。次に多い2019年より25,841件多いことからも、2018年が猛暑であったことが理解できます。(熱中症の発生と環境温には相関があると考えられています。)

2018年の熱中症の搬送件数を他の年と比較するため、まず、過去13年間分の搬送件数をランク付けしてみました。その結果、上位10位に絞ったものを表1に示します。
これまでの1日の搬送件数の最多は、2018年7月23日の東京都の453人です。ちなみに7月23日と言えば、今年は東京オリンピックの開会式の日に当たります。
また、上位100位に占める各年の割合を見てみると、上位100位のうち、全体の44.6%を2018年が占めていることがわかります(図1)。次に割合が高いのは2019年の21.8%なので、2018年は約2倍高い割合です。

このことから、2018年は過去の熱中症の搬送件数のデータの中でも、1日の搬送件数が多い特徴を持つ“年”であったことがわかります。(ちなみに、1日の総搬送件数の合計を全国単位で算出した場合の第1位も2018年の7月18日で、その搬送件数は3,809人でした。また、オリンピック開会式と同じ日に当たる2018年7月23日は、第3位でした。)

猛暑がオリンピックに参加するアスリートに与える影響

熱中症の搬送件数が飛びぬけて多かった2018年と類似した傾向がみられる今年の梅雨明けは、おおよそ7月上旬と見込んでいます。2018年の各地の梅雨明けは6月下旬か7月の上旬でしたので、梅雨明けのタイミングも類似していると言えます。
ちなみに、2018年の関東の梅雨明けは6月29日で、6月に関東が梅雨明けするのは統計開始以来初めてという記録的な年でした。
これらのことから、もし予想通り7月の上旬に梅雨が明けると、2018年の様に1日の搬送件数が何百人となるような日が多い、厳しい夏となるかもしれません。

オリンピック・パラリンピックが開催されるとして、様々な理由で暑熱順化が十分に行えていない状態で競技に参加するアスリートが少なからずでてしまうことを大変危惧しています。
暑熱順化が不十分なコンディションで高温環境下で激しい運動を行うことは、体力レベルの高いアスリートといえども、熱中症発生のリスクが高まります。

そして熱中症は、最悪の場合死に至る障害です。特に屋外の競技に参加するチームや選手のコーチングスタッフには、パフォーマンス発揮のみならず、アスリートの健康を害してしまうような事態を避けることも考慮に入れたコンディショニングを実践する能力が求められるでしょう。

天気は変えられませんが、暑さに対する準備は今からも、そして盛夏の時期も行うことができます。しっかりと暑さ対策を行い、熱中症の発生リスクを軽減させるための行動を取りましょう。(暑さ対策については過去のコラムを参照してください。)

ラニーニャ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より低い状態が続く現象。数年おきに発生すると言われています。

[表1]
[図1]

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